いもーとらいふ 感想
夏休みの終わり。妹が俺に泣きついてきたのは、あちらが六歳で、こちらが十歳のとき。
珍しく側に寄ってきた妹の手には日記帳の表紙があった。目が合うとおずおずそれを差し出してきて、「てつだって」と、か細い声でお願いしてくる。
俺と妹の関係が始まったのは、その瞬間だと思った。
泣き虫で、根性がなくて、ぼーっとしてて、友達もいない、心配で放っておけない存在。
――それが妹だった。
「わたしのじんせーは、にーさんでほとんどだもん」
幼少時代からの成長、そして大人になるなかで選択した人生――。離れられない二人の“一生”を描く、ちょっぴり苦い兄妹ラブコメ。
小説家になるという夢を叶えた妹。その事実は俺の存在意義を揺らがせた。
弱い妹が好き。そして、妹に頼られる自分が大事。そんな独りよがりな想いに気付いたところで人生は引き返せない。
だから俺は、妹と二人で一緒に暮らし続けることに決めた。俺には妹しかいない。これまでも、これからも。親から見捨てられても、世間から白い目で見られても。なるほど、気持ちの悪い兄妹だ。
だけど血肉を分けた妹に人生を捧げて寄り添い抱き合って我が道を行く。
俺の人生はこれで満足だ。
あとがきは非日常の物語を形作る著者が見せる日常の描写なのだ。健康診断の話だったり、編集者との戦いだったり、あとがきを通して非日常というまどろみからゆっくりと現実世界の水面へと浮上してゆく心地よさがある。しかし上巻を読み終えあとがきへ目を通した俺を襲ったのは一瞬にして非常なる現実に呼び覚ます強烈なものだった。
下巻は秋に刊行予定です。
お買い上げ頂きありがとうございました。
コノ野郎やりやがったな。感想も2行で済ましてやろうか。そんなこんなで感想。
最初数字だけが並んだ目次を見たときはヤった回数かと思った、そんな汚れきった心を持つ俺が読後に思ったのはこいつら絶対ヤってるだろ…である。作中であの兄妹が童貞処女とか書かれてるけどあれはアレだから。人気声優が彼氏いたことないですとか言ってるのと一緒だから。あと描写が妙にリアルで実は体験を下地にしていて入間人間に妹がいたのかと思うほどの生々しさがちょっとしんどい。しかし妹には自分というものがないのか。判断基準を兄において意思を決定する人間というのはヤンデレだと仮定しても薄ら寒いものがある。幼少期の精神の形成が兄妹そろって歪んでいるとあのようになるのだろうか……。あの読んでて疲れる感じはなかなか無いだろう。あんな妹が欲しいだけの人生だった……。
評価:B-
以下子細。(ネタバレ注意)
テンポがいい。出会ったと思っていたら付き合っていた彼女。流れるように破局した彼女。まあ彼女は妹じゃないし、ページを割かれないのも仕方ないね。彼女の望む甘々な日々は幻想だったのだ…。そこに残ったのはシスコン野郎と妹だった。そして始まる工場勤務の日々。まあ現実的である。フリーターじゃないだけマシ。実家にて妹の進学先の決定のいきさつを聞いてなお「ま、いいか」と流すあたり人格に難ありだよなあ…。決定的な間違いとなるとここか。普通に考えると軽くホラーなはずなんだけどなあ…。妹に依存されるままに再度歩み寄り、妹との同居が当たり前なままに春の訪れを遂げる。行きつく先なんて限られている上に良い結果と呼べるものではないはずなのに。もはや読んでるこちらの気分は敗戦処理の投手だ。妹と一時的に離れることで妹への依存を自覚。人生終了だろこれ。ペルソナ風に言うと「もう後戻りはできない…。」あ、妹は最初から後戻りはできない状況です。ここでもなお「ま、いいか」と流すあたりがこうなった原因なんだろうなあ…羨ましい……。それにしても押して駄目なら引いてみろに見事に嵌った格好になってるけど一人で考え込む時間がそうさせるのかねえ…。 上巻終了。以下、下巻
ヘイワダナー。おかしいなー。一大事件が日常の一コマになっていたり、「間違い」が自身の活力になっていたり、本当にどうしようもない。いもうとにっきでは妹視点でこれまでのおさらい。歪んでやがる…が、いもうとはヤンデレかわいい。あとは緩やかに優しくも残酷ないもーとらいふを繰り広げて終了。これは新たな人生の形だね!!そんなわけあるか。何とも後味が悪い。妹とラブコメしてたところに目に飛び込む87の文字。言い残すかのような言葉。なんとも形状しがたい悲しみのような感情が胸にわかだまりとして残って頭を抱えたくなるような終わり方が苦しみを加速させる。ダメだろこれ。